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≪NEW≫ ~外国人雇用の現場から~Vol.5 不法就労ってどんなこと?

「不法就労ってどんなこと?」

外国人を雇うには不法就労への注意が必要

外国人の雇用が増える一方で、外国人の不法就労も増えている。

令和4年に不法就労が見つかって日本から強制退去をさせられた外国人は6,355人だった。
もちろん雇用していた企業も罰せられている。

日本で働く以上は外国人にも労働基準法などの日本の労働法が適用される。さらに外国人の場合は入管法(出入国管理及び難民認定法)が適用となり、これを守らないと不法就労ということになる。

外国人の不法就労というと「嫌がる外国人を強制的に働かせる」みたいな恐ろしいイメージを持つ方がいるが、さすがにそんな極悪なケースは今の日本では存在しない、と信じている。

多くの不法就労は「悪いとはわかっているけど、そんなに悪いの?」といった企業や外国人のコンプライアンスの意識の甘さが原因で発生していると思われる。不法就労をカジュアルに考えすぎだ。

もちろん不法就労は重大な罪である。見つかった外国人は強制送還されるし、雇用企業も当然に罰を受ける(※不法就労助長罪)。多額の罰金もしくは懲役、以後5年間の外国人雇用禁止などの処分がある。運が悪ければインターネット上で会社名や社長名が晒され、取引先や親族から冷たい目で見られるという憂き目にもあう。失うものは大きい。

では、そもそも外国人の不法就労とは具体的にどのようなことなのか?

不法就労の3つのパターン

出入国在留管理庁によると外国人の不法就労は大きく3つのパターンがある。

それぞれ解説していくと、

①不法滞在者や被退去強制者が働くケース

日本に密入国してきた外国人とか技能実習先から失踪してきた外国人である。いかにも不法滞在者という人たちだ。少し軽い感じでは日本語学校を卒業したけど、進学も就職もせずに日本に滞在している元留学生などがいる。

もちろん常識的な企業であれば密入国者や失踪者と知りながら外国人を雇うことはないだろう。「人手不足で事業が回らないので、密入国者を雇うことにした」というハードボイルドな社長に、少なくとも私は出会ったことがない。

ただ、こういう不法滞在者は普通のルートでは職探しをしない。当然である。大抵は偽造された在留カードなどを携え、人材紹介会社に扮した怪しげなブローカーを経由して企業に紹介されてくる。履歴書も詐称だし、面接で「闇夜に紛れてボートで入国してきました」と白状する人はいない。

どんな会社がブローカーに狙われるか。よく狙われるのは、人材不足で極度に困っている職場や日本語能力がなくても働ける職場などだ。収穫期のピークを迎えた農家さんや地方の建設現場、スキーリゾートホテルの清掃員などである。ともかく怪しげなブローカーからの外国人の紹介には気をつけよう。

2023年1月1日時点で日本に不法滞在している外国人は7万491人らしい。幸いなことに1993年の30万人をピークに減り続けている。ちなみにアメリカの不法滞在者は1,000万人を超えているようだ。国境が海で隔てられた島国の恩恵に感謝したい。

②出入国在留管理庁から働く許可を受けていないのに働くケース

「日本に滞在する資格はあるけど、働いてはいけない外国人」が働くケースだ。例えば外国人旅行者(短期滞在ビザ)は合法的に日本にいるけど、日本で働くことは出来ない。ちょっとしたアルバイトも禁止である。他にも「研修」や「文化活動」などの在留資格も就労が禁止だ。

外国人を採用するときには、まずは在留カード(在留資格)を見せてもらい、就労できるかどうかを確認することが鉄則である。よく分からないまま採用してはいけない。絶対ダメである。分からなければ、必ず、入管や行政書士などの専門家に確認すべきだ。

「旅行者と偽って日本に入国し、農業や建築現場で働く」といった話は枚挙に暇がない。大抵は怪しげなブローカーが介在している。いくら人手不足でも甘い話には乗らないように注意していただきたい。

③出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くケース

先の2つのケースは確信犯な不法就労だが、今回のケースは知らずに不法就労になってしまっていることもある。注意が必要だ。東証に上場しているような会社でさえ「今になって駄目なことに気づいた。どうしよう?」と相談を受けることがある。

そもそも認められた範囲を超えて働くとはどういったことなのか?日本の入管法では、外国人が日本で働く際に様々な制限があるのだ。仕事内容に制限、勤務時間に制限、そして日本で働ける期間などに制限がある。

仕事内容の制限では「調理の在留資格は調理の仕事だけ」、「翻訳の在留資格は翻訳の仕事だけ」といった風に活動内容が制限されている。いくら本人がマルチな才能とやる気に満ちていても、在留資格で活動内容が制限される。

例えば「技術・人文知識・国際業務」という在留資格は留学生が日本企業に就職するときに取得する代表的な就労ビザだ。通訳とかITプログラマーとか貿易事務とか、日本で約36万人の外国人がこの在留資格で働いている。

この在留資格では、高度な仕事は良いけど単純な仕事は駄目と決められている。つまりホテルのフロントでの通訳業務は良いけど客室清掃は駄目、という具合だ。いくら本人が客室清掃を単純労働と考えず、熱い情熱を持っていたとしても許されない。

外国人を採用するときには、どの在留資格を取ってもらうか、そしてその在留資格で許されている仕事はどんな内容か、を把握しておく必要があるのだ。繰り返すが、よく分からないときは勝手に判断せずに必ず入管や行政書士などの専門家に確認していただきたい。

また、他にも労働時間に制限があるケースもある。例えば留学生は1週間に原則28時間しかアルバイトが許可されていない。掛け持ちしている場合には合算となるので、しっかりと本人に時間を確認する必要がある。

留学生の中には生活費や学費をアルバイトで稼がなくてはいけない学生がいる。もしくは母国の貧しい家族に仕送りするために睡眠時間を削ってでも稼がなくてはいけない学生もいる。そういった身の上話を聞くと、ついシフトを増やしたくなる気持ちは容易にわかるが、絶対に駄目なのである。

以上が不法就労の3つのパターンだ。くれぐれもお気をつけ願いたい。

※不法就労助長罪

働くことが認められていない外国人を雇用した事業主や、不法就労をあっせんした者

(罰則)
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金またはその併科
外国人の雇用人当該外国人が不法就労者であることを知らなくても、在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は処罰の対象となります。また、その行為者を罰するだけではなく、その法人、雇用主等に対しても罰金刑が科せられます。

キャリアバンク株式会社
執行役員 海外事業部 部長
水田充彦

行政書士/社会保険労務士/日本語教師 有資格者。
外国人の採用・定着支援や自治体の多文化共生支援を専門とする。日本全国で外国人採用関連のセミナーを100回以上実施し、地域の外国人雇用の現状に精通。アジア圏を中心に50回以上の海外渡航歴があり、現地の送出機関や教育機関と豊富なネットワークを持つ。