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~外国人雇用の現場から~Vol.3 高度外国人の採用が急増している!

2024年6月13日

高度外国人の採用が急増している!

高度外国人が10年で約4倍に

実は最近、日本で高度な技術を持った外国人労働者が急増している。代表的なのは「技術・人文・国際業務(以下、技人国)」といった在留資格を持っている外国人だ。この10年で約4倍に増え、昨年10月時点で36万人以上の技人国の高度外国人が日本で働いている。なんと、技能実習生の35万人よりも多い。

なぜ、技人国のビザを持った高度外国人が増えているのか。様々な要因がある。
きっかけは2008年に政府が打ち出した「留学生30万人計画」だ。海外から多くの若者が日本の大学や専門学校、日本語学校に大量に留学してきた。そして、日本の学校を卒業した学生の一部が日本で就職する、という大きな流れが生まれた。
参考:文部科学省「留学生30万人計画」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1420758.htm

その他、「インバウンドの急増」も大きな要因だ。2013年に訪日外国人旅行者数が初めて1000万人を超え、政府もインバウンド客誘致を強力に後押しした。受入目標を2020年に4000万人、2030年に6000万人と設定し、日本語が通じない外国人旅行者がたくさん来ることになった。そして通訳などで高度外国人の採用が一気に進んだ。

このように留学生とインバウンドの誘致計画が上手くマッチし、技人国の高度外国人材の採用人数は一気に増えていくことになる。

また、時を同じくして日本全国であらゆる職種で人手不足が深刻化した。事務処理やIT開発などビジネスの拠点を海外に移す日本企業も出てきた。このように人材不足とビジネスの国際化を背景として、外国人採用はさらに進んでいくこととなった。

高度外国人はどこで働いているのか

36万人を超える高度外国人は一体どこで働いているのだろう。先ほど触れたインバウンド対応では、免税店や電化製品チェーン店などで通訳ができる外国人採用ニーズが一気に高まった。なにしろ化粧品や電化製品など価格が高い商品が、中国人客を中心に飛ぶように売れるのである。この流れに乗らない手はない。

また、人材不足を背景として技能実習生や特定技能の外国人が急増した。彼らを支援するための通訳として働く高度外国人も必要とされた。技能実習の監理団体や特定技能の登録支援機関で働く高度外国人はおそらく1万人以上いるだろう。

その他にもITプログラマーや機械エンジニア、研究分野など理系の専門分野でも多くの外国人が活躍している。インドの一流大学を卒業したプログラマーも来ている。最近は地方の建設会社での施工管理や機械エンジニアの採用も増えてきた。通訳としての高度外国人だけではなく、非常に高い専門性を活かして働く高度外国人も増えてきたのだ。

キャリアバンクの海外事業部でも多くの外国人が技人国のビザで活躍している。皆とても優秀である。これからも高度外国人が日本で活躍するフィールドは増えていくだろう。

高度外国人の採用で気を付けることは?

高度外国人の代表的な在留資格は「技人国」である。
実はこの在留資格は気を付けなければいけない点がいくつかある。

まずは、この在留資格は許されている仕事内容が限定されているという点である。
高度な活動をするための在留資格なので単純な仕事をさせてはいけないのだ。
例えば「ホテルのフロントで通訳はしてもよいが、ベッドメイキングはさせてはいけない」などだ。外国人本人が「喜んでやります」といっても駄目である。

こういった法律が作られた背景としては「日本人の職が奪われないため」という目的があったと思われる。外国人労働者の受入れを議論するときに世界各国で頻繁に登場するテーマだ。日本だけではない。個人的には、日本の深刻な人材不足の状況を考慮して、もう少し柔軟な運用を期待したい。

ただ、政府が規制緩和を躊躇する気持ちもわかる。技人国のビザで働くことが出来る内容を拡大すると、必ずさらに拡大解釈する悪い人たちがいるからだ。現状でも、技人国のビザで採用しておきながら工場で単純労働をさせていたり、建設現場で作業をさせていたり、こういった明らかな不法就労は枚挙に暇がない。驚くことに大企業でも普通に行われていたりする。まずは現状の改善が必要である。

もし、読者の中で雇用している技人国の外国人の仕事内容に不安を感じた方がいれば、再度確認されたほうがいいだろう。不法就労助長罪はけっこう重い。

SATOポータル「企業が知っておくべき不法就労や必要な手続きを解説」執筆:水田
https://www.sato-group-sr.jp/portal/archives/194

とはいえ、今後も増える高度外国人

今回のコラムでは、「様々な要因を背景に、課題を抱えながらも増え続ける高度外国人」について書いた。

今後も高度外国人は増えていくのか。確かに課題は多い。上記で述べた技人国の仕事範囲とか、職業安定法を無視した外国人ブローカーとか、倫理観を無くした行政書士とか、円安の問題とか、頭の痛い課題は山積している。

とはいえ、今後も高度外国人は増えていくだろう。

2023年に岸田内閣は「留学生40万人計画(2033年目標)」を発表した。増え続ける留学生と日本の企業とマッチングさせる合同企業説明会などを国や自治体が実施している。当社でも10年くらい前からこういった留学生に特化した就職イベントを数多く運営している。以前に比べると日本企業や留学生の意識も前向きに変わってきたことを実感する。

また、法律の規制も徐々に緩和されている。2015年に「技術」と「人文知識・国際業務」に分かれていた在留資格が現在の「技術・人文知識・国際業務」に統合され、より幅広く外国人の活躍の場が広がった。2019年からは留学生の就職支援のための「特定活動46号」というビザが新設された。さらに今年3月からは専門学校卒業生の技人国ビザ交付の条件が緩和された。

参考:出入国在留管理庁 外国人留学生の就職促進に向けた運用等の見直しについてhttps://www.moj.go.jp/isa/content/001413915.pdf

もはや高度な外国人と一緒に働くことは特別なことではない。今後はもっと一般化していくことだろう。日本企業で外国人マネージャーが日本人チームをまとめていくことも別に珍しいことではなくなるだろう。現にキャリアバンクの海外事業部では外国人マネージャーが活躍している。

外国人と共にどのように会社を発展させていくか。日本企業の雇用のグローバル化はまだ始まったばかりである。人材不足の日本においてこの挑戦は非常に可能性のあるものであると思う。

キャリアバンク株式会社
執行役員 海外事業部 部長
水田充彦

行政書士/社会保険労務士/日本語教師 有資格者。
外国人の採用・定着支援や自治体の多文化共生支援を専門とする。日本全国で外国人採用関連のセミナーを100回以上実施し、地域の外国人雇用の現状に精通。アジア圏を中心に50回以上の海外渡航歴があり、現地の送出機関や教育機関と豊富なネットワークを持つ。