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≪NEW≫ ~外国人雇用の現場から~Vol.8 外国人のキャリアアップ

外国人のキャリアアップ

今回は外国人のキャリアアップについて考えてみます。

日本で働く外国人が200万人を超えて、日本全国のさまざまな職場で活躍しています。その中には日本で生活基盤を作り、母国を離れ日本での永住を考えてくれる外国人もいます。日本人として嬉しい限りです。

ただ、外国人がこの先ずっと日本で生活していくとなると、当然に日本で自立して生きていく必要があります。具体的には地域社会に溶け込み、安定した生活を送れるだけのお金を稼ぐ必要があります。家族が増えれば子供の教育費もかかるでしょうし、マンションを買うにもお金がいるし、現実的に老後の蓄えも必要となってきます。

勤めている会社が倒産するかもしれませんし、体調を崩して働けなくなるかもしれません。異国で自分の力で人生のリスクに対応していかなくてはいけません。日本で生涯にわたって普通の生活を送っていくというのもそんなに簡単なことではありません。これは日本人も同様ですが。

とはいっても、ライフステージごとに必要となってくるお金をしっかりと稼いでいくためにはどうしたらいいでしょうか。親から莫大な資産を相続する予定とか起業して成功してやるという野心的な人達を別にすると、やはり勤めている会社でキャリアアップをして収入を増やしていくのが王道でしょう。

それでは外国人が日本の会社でキャリアアップしていくためにどんな課題があるのでしょうか?

まず外国人が日本で直面するのは「文化と言語の違い」という壁です。当社では特定技能外国人や運営する日本語学校の留学生など現在1000名を超える外国人の支援しておりますが、やはり皆さん、日本に入国したばかりの時は大変な苦労をしています。

例えば、最近日本で急増しているインドネシア人はイスラム教徒がほとんどです。イスラム教徒は豚肉やアルコール等の食事制限がありますし、一日5回のお祈りや一定期間の断食など日本の一般的な文化とは随分と違います。その他にも日本のごみの捨て方や交通機関の乗り方、病気になって病院に行くときなど、外国人は最初は日本で普通に生活するだけで戸惑うことが沢山あります。

さらに、働くとなると日本の会社の文化の違いに戸惑う外国人の人も多いです。「時間厳守」、「報連相」、など、日本独特の厳格さや「空気を読む」といったあやふやさに戸惑う外国人も沢山います。それに日本語で説明されても理解できないこともありますし、質問したくても日本語で表現できないこともあります。

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キャリアバンク海外事業部コラム「外国人が日本で生活するのは大変です」(当社水田 執筆)https://www.careerbank-itnl.jp/column09/

外国人が日本の企業でキャリアアップを目指すとき、まずはこういった文化や言語の壁を乗り越えていく必要があります。

次に「在留資格制度」の壁があります。 なにかと問題のあった技能実習制度が3年以内に廃止になることが決定し、最近は全国で技能実習に変わって特定技能外国人の採用が急増しています。特定技能は介護や飲食料品製造や外食等さまざまな分野で活躍しており、今後はドライバーの領域でも特定技能の受入れは進んでいきます。

引用:出入国管理庁「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」

ではこの特定技能外国人はどんなキャリアを歩んでいくのでしょうか。

実は制度上の理由で、特定技能制度では外国人が「日本でずっと働き続けたい」、「日本で家族を築いていきたい」と思っても出来ないことになっています。具体的にいうと特定技能1号から2号へ変更しないと彼らは日本に5年間しかいることが出来ないし、配偶者を日本に呼び寄せることも子供と一緒に暮らすことも出来ない。

つまり特定技能は2号にキャリアアップをしないと、日本に滞在し続けることも出来ないし、家族を築いていくことも出来ないという制度になっています。キャリアアップが日本滞在の前提となっているのです。

引用:出入国管理庁「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」

では特定技能2号になるのは簡単かというと、難しいと言われている特定技能2号の試験に合格しなければならない。さらに、試験を受けるためには職場で管理者として原則2年以上の経験がなければ受験することすら出来ない。けっこう厳しい制度だなと思います。

ちなみに、外国人労働者の中でもITプログラマーとか通訳職の「技術・人文知識・国際業務」という在留資格の外国人は、在留期間の更新を繰り返していつまでも日本で働くことが出来るし、家族の帯同も許可されています。

今回は外国人のキャリアップの課題について考えてみましたが、その他にも色んな課題があると思います。

中間管理職になったら上司の指示を日本語で理解し現場に日本語で伝える必要があります。今まで以上に高い日本語能力が求められます。

また、日本人側も外国人の上司のもとで働くといったことに慣れていませんので、日本人のチームをまとめていくためには細かな気遣いや配慮が求められます。

外国人の方には是非にもこういった障壁を乗り越えて日本でキャリアアップしていって欲しいですし、日本企業はこのような背景を理解した上で外国人社員のキャリアアップを支援して頂ければ大変嬉しく思います。