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≪NEW≫ ~外国人雇用の現場から~Vol.13 外国人との多文化共生に向けて

外国人との多文化共生に向けて

外国人の実態は統計では分からない

最近、「外国人の実態を調査する」という仕事をいただく機会が増えてきました。

調査の目的は「外国人との共生のために現状の課題を整理する」とか「外国人受入が上手くいっている企業の要因分析」などで、主に自治体の事業で調査を実施することが多いです。

もともと私は出張が多いのですが、このような調査の目的で地方に滞在していると、新たな気づきがあり楽しいです。

そもそも、ある程度の分析は法務省や厚労省の統計を見れば、外国人の人数や国籍、在留資格の変化など、日本全国の外国人の動きは概ね把握できます。

しかし、やはり実際に現場に行ってみないと、地域の中で外国人がどのように過ごしているか、その空気感はつかめません。

地方で実現している外国人との共生

つい先日も人口2万人ほどの港町に数日間、滞在していました。この町では水産加工場で働く労働者を中心に約1,000人の外国人が生活しています。

技能実習生が研修生と呼ばれていた時期(※)から、水産加工場では外国人を受け入れており、町の日本人住民はすっかり彼らに慣れています。特異な目で見る人はいません。
※2010年入管法が改正となり、在留資格「技能実習」が新設された

町のスーパーでも当然のようにヒジャブを被った女性たちが楽しそうに食品コーナーで買い物をしていて、レジの担当者も戸惑うことなく「やさしい日本語」で彼女たちとやり取りをしています。
<参考>:~外国人雇用の現場から~Vol.12 「やさしい日本語」、使っていますか?

技能実習生や特定技能外国人に休日の過ごし方を尋ねてみたら、バスで近隣の大きな街に遊びに行くとか、連休にディズニーランドに遊びに行ったという人もいました。

「地方に住みながら休日は都会に遊びに行く」。日本人にとっては当たり前かもしれませんが、以前の技能実習生にとっては、ちょっと考えられないくらい非常にハードルの高いことでした。

このように、地域の生活に外国人が自然と溶け込み、彼らが楽しそうに暮らしているのを見ると、これが目指すべき外国人との共生の姿なのかなと感じたりします。

もちろん、このように外国人が自然と溶け込めるようになるまでに、この町の自治体や受入企業による様々な取り組みや努力がありました。

外国人の孤立を防ぐために町が積極的に日本語教室や交流会を開催したり、受入企業は外国人が病気になった時には、親のように面倒を見てあげたり、外国人にとって安心して住むことの出来る町づくりに取り組んできました。

こうした長年の努力があって、現在のこの町の外国人との共生の姿があります。まさに多文化共生は一日にしてならず、です。

多文化共生において大切なことは何か

これから育成就労制度や特定技能2号の家族帯同者など、新たな変化が起こります。今現在も日本で暮らす外国人の中で、DVや貧困、相続問題など様々な生活上のトラブルで悩んでいる人も増えています。外国人の増加に伴い、必ず新たな課題が出てきます。

外国人と地域社会が共生していくためには、外国人の受入セミナーや相談窓口の設置、日本語教室、交流会など、やるべきことはたくさんあります。しかし、はたして何が一番大切なのでしょうか。

外国人の受入れが上手くいっている地域や会社を見ると、地域や会社全体で外国人を迎え入れようとする覚悟を感じます。言葉も文化も違う、遠い異国から来た外国人を助けてあげたいという愛情が溢れています。

多文化共生において最も大切なことは、やはり他者への関心と愛情だなと思います。宗教の違いや「やさしい日本語」の知識だけを覚えても意味がありません。

今は社会全体の人間関係が希薄になりつつあるので、このテーマはとても難しい課題だと感じます。即効薬は残念ながらなさそうです。

当社にも外国人社員がたくさんおります。まずは私も含めて当社の職員全員が心から他者を思いやることができるチームになれるように一歩一歩成長していきたいと思います。

こうした各人の取り組みが、いつか日本の多文化共生社会の実現に繋がっていけばとても嬉しいです。

キャリアバンク株式会社
取締役 海外事業部 部長
水田充彦

行政書士/社会保険労務士/日本語教師 有資格者。
外国人の採用・定着支援や自治体の多文化共生支援を専門とする。日本全国で外国人採用関連のセミナーを200回以上実施し、地域の外国人雇用の現状に精通。アジア圏を中心に50回以上の海外渡航歴があり、現地の送出機関や教育機関と豊富なネットワークを持つ。